骨盤矯正とは、歪みによって失われた腰の可動域を取り戻すために行われる、施術の総称です。
骨盤は、上半身と下半身を連結する三つの大きな関節をもち、中でも仙腸関節(せんちょうかんせつ)は移動するためにとても重要な関節です。
歩いたり走ったり、ボールを蹴ったり片足立ちが出来るのは、仙腸関節が上下半身の筋と連動しているからです。例えば、立位姿勢で上半身だけ右向きになると、仙腸関節の右腸骨はわずかに右前方側へ移動し、仙腸関節の左腸骨は左後方側へ移動します。左右の腸骨は同時に逆の方向へわずかな移動を行うと推測しています。同じ理屈で歩行動作は左右交互に歩みますが、左右の腸骨は、前傾側と後傾側へ同時に動きます。
私たちには利き手と利き足が存在します。これは体の能力が左右均等でないことを示しています。背景には運動能力の左右優先脳の存在に基づくと推測されます(注1)。利き足と非利き足の違いが、左右仙腸関節の真逆動作に不均衡な力が続くことで、仙腸関節は不均衡な動きをしています(注2)。
この状態が癖になったり、頻繁に起きるのが仙腸関節の可動性不全です。可動性が損なわれると、体の筋肉の活動が制限されて膝痛、腰痛、肩こりなど、上半身も巻き込んで多様な機能不全の問題が生じることとなります(注3)。
注1. https://sakurachiro.hamazo.tv/e8855463.html
注2. 前原勝也:右利き・左利きの科学,講談社,東京,1989.
注3. 吉野和廣;からだのねじれを正すと交感神経が整う. たま出版,東京,2017
矯正は基本、それぞれのずれた向きと真逆の方向へ圧をかけ、骨を元の位置に戻していきます。
基本は側臥位(そくがい:横向き姿勢のこと)にて行います。症状によっては伏臥位(ふくがい:うつ伏せ姿勢のこと)で行うこともあります。
一昔前、この業界で関節の矯正時に音を鳴らすのが流行った時期がありました。音を鳴らすため勢いをつけて圧をかける傾向があり、その頃は痛みも強かったと思います。
今は強い矯正はなく、当院でも行っていません。
骨盤矯正というと「産後の骨盤矯正」といった文言をよく、巷で耳にするかと思いますが実はこの”骨盤がずれる”という現象、産後という限定された状況だけで起きるものではありません。
日々の生活の中で常に起きている現象です。
勿論、出産時に骨盤は開いて産道を広げますが、終わると骨盤は定位置に戻ってくるので、産後を理由として格別の矯正は必要ありません。
必要なのは格別の矯正ではなく、むしろ慢性腰痛に対する矯正です。
赤ちゃんは段々と重くなっていきます。それを支えるため、自然とお腹を突き出して抱っこする様になる方が多いと思いますが、これが慢性腰痛の遠因です。
足が痺れたり、足首が痛くなったりするのも、ここに原因の一つがあります。